第7章
ストックホルムの冬の夜は、訪れが早い。
紗季はカロリンスカ研究所の図書館を出ると、マフラーをきつく巻き直し、寮への帰路についた。細かな雪が舞い、長い睫毛にふわりと落ちる。
「紗季!」
その声に、彼女の身体が凍りついた。
振り返ると、そこには街灯の明かりに照らされた桐島怜真が立っていた。やつれ切った顔。コートには雪がこびりつき、髪は乱れ、瞳は血走っている。
彼は大股で詰め寄ると、紗季の手首を万力のように掴んだ。
「よくも……よくも俺を一人置いて逃げたな!」
「放して!」
紗季は必死に抵抗する。
「東京へ戻るぞ!」
怜真の声は咆哮に近い。
「紗季、俺が悪かった...
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