第9章

怜真の葬儀は、東京で執り行われた。

紗季は帰国しなかった。

ストックホルムのアパートメントに一人座り、スマートフォンの画面を見つめる。そこには、親友が送ってきた動画が再生されていた。

黒一色に染まった祭壇、手向けられた白い菊。桐島家の親族たちが上げる慟哭が響く。

その最前列に、成瀬白子は黒のワンピース姿で佇んでいた。微かに膨らんだ腹部を抱え、さめざめと涙を流している。

「桐島家の種さえ宿せば、本妻の座に居座れるとでも思ったんでしょうね」

動画越しの親友の声色には、隠せない嘲りがあった。

「結果どうなったと思う?」

紗季は無言のまま、ただ静かに耳を傾ける。

「そ...

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