第8章

 グレスと再会したのは、ある昼下がりのことだった。

 執事のジュゼッペが足早に歩み寄ってくる。

「お嬢様、門前で狂人が騒いでおります。旦那様の母親だと喚いておりまして」

 かつて私を見下し、その身分の低さをことあるごとに嘲笑っていたグレス。だが今の彼女は髪を振り乱し、私を見るなり蜘蛛の糸にすがるような必死の形相で、ボディガードの制止も聞かずに突進してきた。

「エリンナ! ソフィアを出しなさい!」

 長年の絶叫で枯れ果てた、耳障りな金切り声だ。

「あの子はマルクの唯一の血肉! ムレーディ家、唯一の跡取りなんだよ! クロディーアとかいうクズは死んだ、子供も流れた、もうソフィアしかいな...

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