第6章

保険金の請求に必要な書類を警察署で手続きするため、私はまたここへ来ていた。

「佐藤さん、こちらへどうぞ」

若い警官の声が、私の思考を遮った。

彼に案内されて小さなオフィスに入ると、ベテランの警部が机の向こうに座り、目の前には書類の山が広げられていた。私は俯き、悲嘆に暮れた様子を装う。

「事故現場の調査は完了しました」

警部は眼鏡を押し上げ

「あなたのアリバイも確認済みです」

私は頷くだけで、何も言わない。

傍らに立つ若い警官の瞳に、一瞬、異様な光が宿る。まるで、狩人が獲物を見つけたかのような眼差しだ。

だが、ベテラン警部はただ事務的に、捺印済みの証明書類を私に...

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