第102章

福祉施設の石段、その隅に、ぼろぼろの段ボール箱が置かれていた。

吹きすさぶ風雪の中、かすかな泣き声が混じる。

松本彩世は足早に近づき、箱に掛けられていた古い毛布をそっとめくった。中にいたのは、生後数か月ほどの男の子。

凍えた頬は紫がかり、泣き声さえ糸みたいに細い。

胸の奥をぐい、と掴まれた気がした。彩世は迷わずコートを脱ぎ、赤ん坊を包み込んで、きつく抱きしめる。

温もりが伝わったのか、赤ん坊は泣き止み、ぱちりと目を開いた。そして彩世に向けて、かすかな笑みを浮かべた。

その瞬間、彩世の目の縁が熱くなる。

彩世は顔を上げ、立花千時を見た。揺るがない眼差しで言う。

「この子を、引き...

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