第104章

電話は一方的に切られ、ツー、ツーという無機質な音が、静まり返った寝室にやけに鋭く響いた。

松本凛は絨毯の上にへたり込み、スマホが掌からするりと滑り落ちる。

画面に映る松本彩世の、手の届かないほど高い場所にいる顔。

嫉妬と無力感が絡み合い、凛の胸の内を丸ごと飲み込んでいった。

――国外での暗殺は通らない。

計画は、いったん棚上げするしかない。

スイス・チューリッヒ。アヤブランド本社。

松本彩世はデスクに座り、目の前の書類へ視線を落としていた。

アヤとLVMHグループの共同による、ハイエンド・クチュールライン北米展開の企画書。

LVMH北米エリア社長は、初回の発表会と調印...

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