第105章

彼女は、この空間に一秒たりとも長居したくなかった。さっさと囲み取材を終わらせて、ここから消えたい――ただ、それだけ。

そのとき。

影の中に立つ新谷寒季は、全身の血が一滴残らず凍りついたように動けなくなっていた。

今日は、金融街のパートナー連中に半ば無理やり引っ張られて、このイベントに顔を出している。

もともとファッションブランドの契約式だの何だのに興味はない。隅でぼんやり時間を潰すつもりだった。

――スポットライトが、壇上の女を照らすまでは。

白いスーツ。きっちりまとめた髪。冷たく鋭い眉と目。

その顔は、五年間、何度も何度も彼の悪夢に出てきた。

冷え切った海の底にも、あの顔が...

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