第108章

その言葉を聞いた瞬間、松本凛の身体がぴたりと固まった。次いで――耳を裂くような甲高い冷笑が爆ぜる。

涙まで滲ませて笑いながら、凛は新谷寒季を見た。まるで、救いようのない狂人でも眺めるみたいに。

「新谷寒季……あんた、ほんっとに哀れね!」

松本凛は歯を食いしばり、毒を吐く。

「松本彩世が戻ってくるとでも思ってるの? 部屋を空けたら、彼女があんたを一度でも見てくれるとでも? 寝言も大概にしなさいよ!」

凛は絨毯に手をついて立ち上がった。瞳は濁った悪意でぎらついている。

「彼女はいま立花千時の婚約者! スイスで子どもまでいるのよ! 松本青輝ってガキ、あれは彩世と立花千時の子! 向こうは...

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