第109章

頭の中は、松本青輝のあの顔と、電話口で立花千時がさらりと言い放った『家族で休むから』という一言で埋め尽くされていた。

五歳。

あの子は、五歳。

新谷寒季はハンドルを握り潰す勢いで両手に力を込めた。関節が白く浮く。

――五年だ。

五年、苦しみ続けた。

自分が彼女を殺した罪人だと、ずっと思ってきた。

なのに、どうだ。

松本彩世は死んでなどいない。

それどころか眩しいほどに生きていて、しかも五年前、N市を出る前から立花千時と関係を持っていた。

「クズ……」

喉の奥から、獣みたいな唸りが漏れる。

新谷寒季は車を蘇荷区の会員制プライベートバーの前に停め、扉を押し開けた。

薄暗...

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