第11章

立花千時はその場に立ち尽くし、松本彩世の細く頼りない後ろ姿を見送った。眉間には深い皺。彩世の瞳の奥にある冷えた拒絶は見て取れる。それでも――これは彼女の家庭のことだ。強引に踏み込む資格など、自分にはない。

新谷寒季は松本彩世を連れ、展示ホールの反対側にあるプライベートラウンジへ直行した。

柔らかなソファに彩世を座らせると、寒季は半膝をつき、冷え切った指先を両手でぎゅっと包み込む。頭を低くし、必死に縋るような仕草。

「彩世、ごめん。さっきは……俺が悪かった」

顔を上げる。端正な顔には懊悔と、やけに濃い情が滲んでいた。

「俺、君のことが大事すぎるんだ。あいつに笑ってるのを見た瞬間、頭が...

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