第111章

松本彩世はチャイルドシートから松本青輝を抱き上げ、自分の膝に乗せた。小さな肩を両腕で包み、まっすぐに瞳を覗き込む。

「青輝。ママの目を見て」

声は柔らかいのに、芯が揺れない。

「あなたは、あの男とは何の関係もない。あの人は頭がおかしくなって、勝手なことを言ってるだけ。青輝のパパは立花千時だけ……いい? 忘れないで」

その断言に、青輝のこわばっていた身体がようやくほどけた。

彼は力いっぱい頷くと、彩世の胸に顔をうずめ、くぐもった声でぶつぶつ言う。

「ぼく、あの人がパパなんてイヤ。こわいし……ママいじめるもん」

彩世は背中をぽん、ぽんと叩きながら、目の色を冷やした。

新谷寒季の執...

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