第114章

松本彩世は目つきを鋭くし、傍らの松本青輝をぐっと抱き寄せて庇うと、身を右へ跳ねるようにかわした。

熱いミルクが彼女の袖をかすめて宙へ散り、昂価なペルシャ絨毯にぶちまけられる。じゅわっと白い湯気が立ちのぼった。

松本凛が体勢を立て直すより早く、松本彩世は長い脚を振り上げる。尖ったハイヒールのつま先が、容赦なく松本凛の下腹へ叩き込まれた。

「ぐっ――!」

悲鳴が漏れ、松本凛はバランスを失って後ろへ転がる。背後の木製チェア二脚を派手に倒し、がしゃん、と陶器の割れる音が静かなダイニングに突き刺さった。

視線が一斉に集まる。

松本凛は腹を押さえて床にへたり込み、痛みに顔を歪めた。だが次の瞬...

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