第116章

松本彩世は感動するどころか、自ら刃を握り、彼の心臓を貫いた。残っていた最後の矜持さえ、足元で踏みにじって。

新谷グループ本社、社長室。

新谷の母が扉を押し開け、よろめくように入ってくる。

床から天井まで届く窓の前で、ひと言も発さず立ち尽くす新谷寒季。その背中を見つめた母の瞳には、絶望が濃く沈んでいた。防音ガラス越しに、階下の抗議の怒号がかすかに滲む。新谷グループの株価は、すでに底を割っている。

「寒季……お願い。私から頼むわ」

新谷の母の声は震え、今にも膝を折りそうだった。

「もうやめて。取締役会は法的手続きであなたを解任する準備をしてる。銀行だって明日には資産を差し押さえに来る...

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