第119章

須藤夏夜は病室のベッド脇に腰を下ろし、真っ赤に腫れた目で、ぬるい水の入ったコップを両手で支えていた。

松本彩世の喉は砂でも飲み込んだみたいに乾ききっている。指先をわずかに動かし、目を開けて最初に絞り出した言葉は――

「千時は?」

須藤夏夜の身体がびくりと跳ねた。コップを持つ手が、宙で止まる。

彩世の視線を避けるように目を泳がせ、喉を詰まらせた声で言う。

「……起きたばかりだし。先生も軽い脳震盪だって。まずは水、飲んで喉を――」

松本彩世は、須藤夏夜のそういうところを嫌というほど知っている。

その逃げる目。

それは、絶対にいい知らせじゃない。

胸の奥から巨大な恐怖がせり上がり...

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