第121章

彼は容赦なく窓を上げ、松本凛の絶望の泣き叫びを完全に遮断した。

「出せ」

新谷寒季は本革のシートに身を沈め、目を閉じる。車外を振り返りもしない。

マイバッハのエンジンは、すでにかかっていた。

窓の向こうで、松本凛が狂ったように防弾ガラスを叩いている。

さっき新谷寒季が吐き捨てた「俺の妻は松本彩世だけだ」という一言は、毒針みたいに、ただでさえ歪んだ彼女の心臓へ深々と刺さった。

嫉妬と怨嗟が理性を突き破る。

「新谷寒季! 夢見てんじゃない!」

ガラス越しに、松本凛が喉を裂くように叫ぶ。顔には復讐の快感がべったり貼りついていた。

「松本彩世はもう死んでる! とっくに死んでるの!」...

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