第126章

歯を食いしばって呻き、暗がりで太腿を爪が食い込むほど強くつねる。――痛みを、嘘じゃない反応に変えるために。

「彩世!」

須藤夏夜が即座にしゃがみ込み、振り向きざま護衛に怒鳴った。

「この子、重い胃の持病があるの! 早く救急車呼んで!」

須藤夏夜は松本彩世を支えるふりをしながら、視線だけで合図する。反対側の非常口へ――走れる準備を。

だが、ヒールの乾いた音が近づいてきた。

松本凛が歩み寄り、床にうずくまる松本彩世を見下ろして、鼻で笑う。

そして容赦なく、ぐしゃりと一歩。

松本彩世の手の甲を、踵で踏みつけた。

「っ――あっ!」

鋭い悲鳴が漏れる。

「私にその手、通じると思っ...

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