第127章

松本彩世は顔を上げた。視線が宙をさまよい、焦点が合わない。

「立花社長はN市へ入る前に、最後の保険を打っていました」

太田寅助が低い声で、爆弾のような事実を落とす。

「万が一、社長が死亡、あるいは失踪して法定期間を超えた場合――社長名義の個人資産の70%、立花グループの中核株式、スイスの邸宅、海外のオフショア・ファンドまで、すべて無条件であなたの名義に移る手続きが完了しています」

松本彩世は雷に打たれたように固まった。

その場に立ち尽くし、頭の中が真っ白になる。

立花千時は、N市が危険だと分かっていた。

戻れない可能性まで、最初から織り込み済みだったのだ。

命を賭けて彼女を助...

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