第128章

須藤克己は血の匂いを嗅ぎつけた狂犬みたいに、ここぞとばかりに立花グループのアジア事業へ狂ったように空売りを仕掛けた。

わずか数日のうちに、N市で動いていた立花グループの中核プロジェクトがいくつも、須藤克己に力ずくで呑み込まれていく。

松本彩世は金のことなんて、どうでもよかった。

彼女は毎日、邸宅の大きな窓の前に座り、鉛色の空を見上げていた。神経は張り詰め、限界まで研ぎ澄まされている。

「……まだ、何も?」

毎朝、松本彩世が太田寅助の顔を見るなり口にするのは、決まってその一言だった。

太田寅助は険しい表情のまま、ゆっくり首を横に振る。

「沿岸警備隊は捜索を打ち切りました。立花グル...

ログインして続きを読む