第129章

松本彩世は振り返らず、ただ小さくうなずいた。

「行って。気をつけて」

太田寅助は数人の手下を連れて足早に去っていく。がらんとした廊下に残ったのは、松本彩世と須藤夏夜、そして長椅子に座る松本青輝だけだった。

須藤夏夜は彩世の前に歩み寄り、自分の上着を脱いで、かすかに震える肩へそっと掛ける。目尻を赤くしながら支え、囁くように言った。

「彩世、座って待とう。あの人は命が太い。きっと持ちこたえる」

須藤夏夜に促されるまま、松本彩世は冷たいプラスチックの長椅子へ、力なく腰を落とした。

松本青輝がすぐに寄ってきて、小さな腕で彩世の腕にしがみつく。顔を腕の内側に埋め、声を殺して泣いた。

松本...

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