第130章

腹部の傷はまだ塞がりきっていない。歩けば奥のほうがじくじく疼く。

だが新谷グループはいま、前からも後ろからも噛みつかれていた。取締役会から突きつけられたのは最後通牒。病床で死んだふりなどしていられない。――無理やり退院し、指揮を執るしかなかった。

秘書が荷物を提げて後ろにつき、最近の火種を小声で報告してくる。

新谷寒季は苛立ちまぎれにネクタイを引き、エレベーターホールへ向かった。

「チン――」

少し先、VIP専用のエレベーターがゆっくり開く。

松本彩世が松本青輝を抱いたまま乗り込み、振り返って階数ボタンに指を伸ばした。

新谷寒季は反射的に顔を上げる。

扉が閉まりかけた、その刹...

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