第18章

新谷寒季の拳は、鋭い風を引き裂いて振り抜かれた――が、松本彩世の鼻先ほんの1寸のところで、ぎりぎりと止まる。

彼の両目は血走り、胸が荒く上下していた。

立花千時の前に立ちはだかる松本彩世を、獣みたいに睨みつける。

青白いのに、退かない。

その決然とした顔が、毒を塗った針みたいに彼の自尊心へ突き刺さった。

「……庇うのか?」

新谷寒季の声は、歯の隙間から搾り出したように震えていた。信じられない怒りが滲む。

「松本彩世。お前は俺の妻だろ。いま、よそ者のために命まで捨てて、俺の拳を受けるつもりか?」

松本彩世は、彼の激昂を見上げても表情ひとつ変えなかった。

波一つ立たない瞳のまま...

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