第19章

そのとき、宴会場のほうから澄んだアナウンスが響いた。オークションはまもなく開幕するため、来場者は早めに着席するよう促している。

沈黙を保っていた立花千時が、ちょうどいいタイミングで場の空気を切り替えた。

使わずに済んだシルクのハンカチを丁寧にポケットへ戻し、何事もなかったかのように泰然とした表情のまま、松本彩世へ穏やかに声をかける。

「行こう。もう始まる。南アフリカの原石は後半だから、まずは前のロットを見ておこう」

松本彩世は小さくうなずき、新谷寒季へは余計な視線ひとつも寄越さない。スカートの裾を持ち上げ、そのまま立花千時と並んで立ち去ろうとした。

「待て!」

新谷寒季の瞳に、所...

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