第21章

医師は安胎用の錠剤を数粒だけ置き、言葉少なに退室した。

その瞬間、休憩室は死人が出たみたいな静けさに沈む。

立花千時はソファ脇へ歩み寄り、コップに水を注いだ。薬をつまみ、彼女の唇元へそっと差し出す。

動きは終始やわらかい。踏み込みすぎる気配も、詮索もない。

松本彩世は彼の手を借りて薬を飲み下した。苦みが舌に広がり、喉を伝い、心の奥までじわりと染みていく。

目を開け、頭上のきらめくシャンデリアを見上げる。唇の端が、自嘲の弧を描いた。

「私って……馬鹿だよね」

松本彩世の声は掠れていた。力が抜けきったように。

「一人を全力で愛しさえすれば、同じだけの真心が返ってくるって思ってた。...

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