第33章

だが、病室の扉を押し開けた瞬間、彼を迎えたのは冷え切った静寂だった。

ベッドはもぬけの殻。毛布はきっちり畳まれ、そこに松本彩世の姿はどこにもない。

新谷寒季はその場で立ち尽くした。胸が、どくんと嫌な音を立てる。

すぐにスマホを取り出し、松本彩世へ発信する。耳に届いたのは、無機質な女の音声だけだった。

「申し訳ございません。おかけになった電話には、ただいまお出になれません……」

1回。2回。3回。

何度かけても、出ない。

得体の知れない恐怖が、蔓のようにするすると伸びてきて、一瞬で新谷寒季の心臓を締め上げた。

どこへ行った?

あんなに弱っていたのに、どうして急に退院なんか――...

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