第34章

彼女はテーブルに手をついて立ち上がり、ドアを開けて外へ出た。

リビングはがらんとしていて、壁灯ひとつ点いていない。

空気の中からは、新谷寒季にまとわりつくように染みついていた冷たいウッドの香りが消えていた。……つまり、もうとっくにいない。

松本彩世は驚きもしない。きっとまた、あの「かわいい妹」が病院で『お腹が痛い』とでも言って電話をかけたのだろう。たった一本で、彼は簡単に釣られる。

それが、新谷寒季の口先だけの深情だ。

彩世はローテーブルへ向かい、水でも飲もうとした。だが大理石の天板に、未開封のスマホ箱がひとつ、静かに置かれているのが目に入る。最新機種。最上位モデル。

松本彩世は...

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