第36章

生理的な嫌悪が喉元までせり上がる。そこへ妊娠初期の激しい反応が重なって、松本彩世はもう限界だった。

「っ……!」

彩世は咄嗟に力いっぱい新谷寒季を突き飛ばした。口元を押さえたまま前かがみになり、傍の植え込みへ向かって激しくえづく。

昨夜からほとんど口にしていない。吐き出せたのは、苦く酸っぱい液体ばかりだった。涙まで勝手に滲んでくる。

新谷寒季は押されて、よろけながら半歩下がった。

呆然と、顔色を失い、胃液すら出し切りそうな彩世の背中を見つめる。最初は理解できない顔だったのに――次の瞬間、稲妻みたいなひらめきが脳を叩いた。

えづき。眠気。情緒不安定。

新谷寒季の瞳に走っていた動揺...

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