第38章

その言葉は、どう考えても最初から打ち合わせ済みの台詞だった。

「不審」という単語が出た途端、渡辺春帆は溺れかけた人間が藁にすがりつくみたいに、長椅子から勢いよく跳ね起きた。

「不審ですって? 普通に暮らしてる人が、原因も分からず出血するわけないでしょ!」

渡辺春帆は新谷寒季の腕をがしっと掴み、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、歯を食いしばって泣きついた。

「寒季、これは絶対、うちの凛が幸せになるのが気に入らない誰かが、裏で呪ってるのよ! 病院は病気は治せても、呪いまでは治せないんだから!」

新谷寒季は、そのあまりに胡散臭い言い草に苛立ちが込み上げた。けれど、原因不明のあの血溜ま...

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