第45章

「お義兄さん、母に頼まれてお届け物を……」

松本凛は保温ポットを提げ、ヒールの音を響かせながら入ってきた。

言い終える前に、室内の光景が目に飛び込む。

凛の笑みが、ぴたりと凍りついた。

――何を見た?

いつも傲慢で、誰にも頭を下げない新谷寒季が。

いまは松本彩世の前で、声を落とし、機嫌をうかがい、卑屈なほど丁寧に取り入ろうとしている。

そんな姿、松本凛は生まれて初めて見た。

胸の底で嫉妬が爆ぜ、凛の表情が歪む。保温ポットの取っ手を握りしめ、爪が食い込んで白くなる。

ヒールで一歩、また一歩。

わざとらしく甘い声を絞り出し、嫌味たっぷりに口を開いた。

「お姉ちゃんって、ほん...

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