第50章

マイバッハは邸宅へは戻らず、そのまま都心へ向けて滑るように走った。行き先は、名の通ったミシュラン三つ星のフレンチ。

この店は予約が取れないことで有名だ。松本彩世が一度「行ってみたい」と口にしたことがある。けれど当時の新谷寒季は、いつも「会社が忙しい」と取り合わなかった。――そのくせ、後日。パパラッチに撮られたのは、店を丸ごと貸し切って松本凛の誕生日を祝う姿だった。

それなのに今日は、やけに甲斐甲斐しい。車を店先に停めると、寒季は迷いなくエスコートした。

スタッフが恭しくガラス扉を開ける。寒季は彩世をいちばん見晴らしのいい窓際へ案内した。窓の外には、きらきらと眩しい都市の夜景が広がってい...

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