第52章

コールは3回で繋がった。

「どこに行ってたんだ?」

新谷寒季の声は張りつめていた。自分でも気づかないまま、責める色が滲んでいる。

「夏夜と買い物」

松本彩世の声は、淀んだ水面みたいに平板だった。

まるでそれを裏づけるように、通話の向こうで須藤夏夜が騒がしく店員に告げる。

「アイスのアメリカーノで。彩世、クロワッサンも頼む?」

その声を聞いた途端、新谷寒季の胸を締めつけていた糸が、ようやくぷつりと緩んだ。

立花千時でさえなければいい。

まだ自分の手の届く範囲にいるなら、誰と出かけようと構わない。

「なんだ、夏夜が来てたのか」

新谷寒季はすぐさま声色をやわらげる。気づかい深...

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