第69章

松本彩世は、彼の額にこびりついた乾いた血を見つめた。

さっき、石があと少しずれていれば自分の頭を直撃していた。なのに新谷寒季が最初に口にしたのは、安否の確認じゃない。――立花千時と自分の関係を問い詰める言葉だった。

「……あの人がいなかったら、私、今ごろ死んでた」

松本彩世は彼を見上げた。瞳は氷みたいに冷たく、失望を隠しもしない。

「新谷寒季。あなたって、私を責める以外に何ができるの?」

新谷寒季の身体が、ぴくりと固まる。

松本彩世の、役立たずを見る目。

それは鋭い刃となって、狙い澄ましたみたいに彼の心臓を貫いた。

恐怖が一気に喉元までせり上がる。

怒鳴られるより、泣かれる...

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