第74章

先ほどまで和やかだった宴会場に、ふっと短い沈黙が落ちた。

帝都の名士や由緒ある名家は、何よりも「品」と「節度」を重んじる。

今夜の趣旨は、困窮する子どもたちのための募金。集まった貴婦人たちも、慈善の場を食うような派手さは避け、控えめで上品な装いに揃えていた。

そんな中――。

松本凛の、全財産を身にぶら下げてきたみたいな成金然とした出で立ちは、一瞬で場の「異物」になった。

「誰、あれ。クリスマスツリーみたいじゃない?」

「やだ、エメラルドが悪趣味すぎる。センス皆無」

「警備、どうして入れたのよ……?」

ひそひそ声と、隠しもしない侮蔑。

それが徳川奥様の耳にも届く。

体面と規...

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