第77章

「真夜中に寝もしないで、ここで何を机なんか拭いてるんだ?」

静まり返った書斎に、新谷寒季の声が不意に落ちた。探るような、冷たい響き。

松本彩世は机を拭く手をほんのわずか止めただけで、動揺の色は一切見せない。

背筋を伸ばし、振り返る。澄んだ冷たい視線が、新谷寒季の値踏みするような目を真正面から受け止めた。

「眠りが浅いの。起きちゃって眠れなかったから、ついでに掃除してただけ」

淡々と言い、彩世は手にしていたダスターを机の隅へ放る。それから、何気ないふりでパソコンへ視線を滑らせた。

「なに? 新谷社長の書斎って、いまや立ち入り禁止区域? 私、入ることすら許されないわけ?」

新谷寒季...

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