第80章

同じ頃、下町にある高級レジデンスの一室では、空気が氷点下まで落ちていた。

松本凛はスマホ画面を穴が開くほど睨みつける。SNSに流れてきた眩しいほどのツーショット。百万を超える「いいね」。その一つひとつが刃になって、目の奥をえぐった。

嫉妬という毒火が胸の内で渦を巻き、理性を焼き尽くしていく。

――ピッ。

玄関のテンキーが解錠音を鳴らした。

新谷寒季が、疲労を纏ったままドアを押し開けて入ってくる。さっきまで投資家連中を相手に神経をすり減らし、ここで少し息をつくつもりだったのだろう。

「寒季!」

松本凛は即座にスマホを投げ出し、スリッパのまま駆け寄った。真っ赤な目で、彼の腕にしがみ...

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