第82章

松本彩世は彼を淡く一瞥しただけで、わざわざ暴く気にもならず、そのままデザートコーナーへ向かった。

彩世が十分に離れたのを確認すると、新谷寒季は松本凛の手首を乱暴に掴み、宴会場の脇にある人目につかない通路へ力任せに引きずっていく。

「……お前、正気か? 来るなって言っただろ」

寒季は凛を壁へ叩きつけた。目は血走り、今にも喉元に手を伸ばしそうな勢いだ。

「なんで来ちゃいけないの……?」

凛は手首をさすりながら、悔しそうに目尻を赤くする。

「私、あなたの子の母親だよ? どうして下水のネズミみたいに隠れてなきゃいけないの。……ただ、会いたかっただけ」

寒季は弁解など聞く気もなく、スマホ...

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