第83章

私立病院の救急外来。

一通りの応急処置を終えると、医師は聴診器を外し、新谷寒季をまっすぐ見据えた。表情は硬い。

「新谷さん。胎児は助かりました。ただし妊娠中に、あんな激しい行為は絶対にやめてください。次があれば……今度は誰にも、この子は救えません」

新谷寒季は耳まで赤くなり、何度も頭を下げるようにうなずいた。

病室では、松本凛が枕に背を預け、血の気のない顔で横たわっている。

新谷寒季の、怯えと後ろめたさが混じった表情を見て、凛は悟った。――今だ。

「寒季……赤ちゃん、いなくなるところだった……」

凛は涙をぽろぽろ落としながら、新谷寒季の手首にしがみつく。指先が白くなるほど強く。...

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