第84章

そう言い終えると、新谷寒季は背筋を伸ばしたまま、彼女に視線すらくれず踵を返す。砂利を踏み鳴らし、大股で別荘へ戻っていった。

ざあん、ざあん――波が岩礁を叩く音だけが残る。

松本凛はその場に座り込んだまま、全身を小刻みに震わせていた。

新谷寒季の言葉が、最後の幻想を粉々に打ち砕いたのだ。

松本彩世の言うとおり。自分はただの「産むための道具」。

松本彩世が生きている限り、自分が新谷寒季の隣に、正々堂々と立てる日は来ない。

屈辱と絶望が胸の底で腐るように発酵し、やがて形を変える。

背筋が凍るほどの殺意へと。

松本凛は奥歯をぎり、と噛みしめた。地面に落ちた、画面のひび割れたスマホを拾...

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