第90章

チューリッヒの手がかりが、途絶えた。

新谷寒季はプライベートバンクにも出入国管理局にも当たった。だが返ってくるのは、スイスの厳格な顧客情報保護を盾にした門前払いばかり。松本彩世に関することは一切、口を割らない。

現地で二日間、当てもなく駆けずり回った。成果はゼロ。胸の奥に、巨大な恐慌が怒りと絡みついてせり上がる。寒季は一秒も無駄にせず、湾流G650で帝都へ引き返した。

会社にも寄らない。東区のマンションにも戻らない。向かったのは松本家の別荘だった。

リビングでは、松本智徳と渡辺春帆がソファに座り、何かを相談している。

次の瞬間――

玄関が、護衛に蹴り破られた。

冷え切った殺気を...

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