第97章

「分かってる」松本彩世は顔も上げず、手の中の筆を走らせた。ラフ用紙の上で線がすばやく躍る。「だから、この勢いのまま畳みかける。春の新作、メインのシリーズを前倒しで仕上げるつもり」

彼女は徹頭徹尾、行動で結果を出すタイプだ。

いったん目標を定めたら、力を100%注ぎ込む。

それから数日、松本彩世はほとんどアトリエに籠もりきりだった。トルソーに向かってパターンを詰め、細部を直し、また直す。

時計の針は夜11時を指す。

スタッフは次々と上がり、残っているのは松本彩世と須藤夏夜だけ。

そのとき、扉の外から落ち着いた足音が近づいてきた。

ガラス扉が押し開けられ、冷たい風が雪を巻き込みなが...

ログインして続きを読む