第120章 彼女はまだ生きている

茅野芽衣は、相馬幸江に遭遇すること自体は怖くなかった。ただ、真正面から鉢合わせれば、どうしたって余計な口を使う羽目になる。

時間を無駄にしたくない。芽衣は身をかがめ、脇の石柱の陰へすっと滑り込むと、半分だけ顔を隠したまま足早にその場を離れた。

けれど、いくら急いでも――相馬幸江の目は誤魔化せなかった。

彼女は去っていく背中を追い、次の瞬間、胸の奥がぞくりと冷える。

あの横顔……まさか――茅野芽衣?!!

半分しか見えていない。それでも、心臓がひゅっと縮むほどの確信があった。

相馬幸江は胸元を押さえながら、最近耳に入ってくる噂を思い出す。A市に、息子の元妻にそっくりな女が現れた。名前...

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