妊娠中に浮気されたから死んだふりして逃げたのに、なんで私の遺骨を奪い合ってるの?

妊娠中に浮気されたから死んだふりして逃げたのに、なんで私の遺骨を奪い合ってるの?

月島 ことね · 連載中 · 334.5k 文字

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紹介

誰もが相馬瑛太は自分の命よりも私を愛していると言った。
私自身、かつてはその言葉を微塵も疑っていなかった。

その後、私は瑛太の子を身ごもった。
けれど、義理の妹から告げられたのは、彼女もまた彼の子供を宿しているという残酷な現実だった。

その瞬間、私は復讐を誓った。
彼の口座からすべての資金を巻き上げ、完璧な事故を計画して、自分の死を偽装したのだ。

私が「この世を去った」その日、瑛太は完全に精神を崩壊させた。
まるでそれだけが生きる支えであるかのように、私の骨壺を狂ったように抱きしめていたという。

彼が私の遺影の前で身を引き裂かれるように号泣している頃、私はもう別の男の手を握りしめていた。
――私の人生のどん底で、決して私を見捨てなかった、あの人の手を。

そうして私は、今度こそ本当に私だけの、新しい人生へと歩み出した。

チャプター 1

「……義兄さんの子、できちゃった。お姉ちゃん、怒らないよね?」

――子ども。

その言葉が、耳の奥でぶんぶんと鳴り続ける。

電話の向こうから届く甘ったるい声を聞いた瞬間、茅野芽衣の心臓は、見えない手でぎゅっと握り潰されたみたいだった。

産婦人科の廊下。

天井灯の白さが刺さるほど眩しくて、その光が、芽衣の手の中の検査票へ冷たく落ちる。

「妊娠確認 6週」

――相馬瑛太との子だ。

「お姉ちゃん、聞いてる?」

養妹の茅野美月は、無邪気な口調のまま毒を塗りつけて笑う。

「義兄さんね、あたしのこと心配して、仕事ぜんぶ断って検診ついてきてくれたの」

その先は、もう耳に入らなかった。

鋭い耳鳴りと、胸の奥を薄皮一枚ずつ剥がされるような鈍痛だけが残る。

視界がじわりと暗くなる。

消毒液の匂いが濃すぎて、胃の底から吐き気がせり上がった。

――一か月前。結婚記念日。

瑛太の帰りは遅かった。

そして、あの懐かしい白桃の香りをまとっていた。

問いただす間もなく、情熱的に唇を塞がれた。

理性が溶ける中、芽衣は彼の首に腕を回し、耳元で囁いた。

「瑛太……子ども、欲しいな」

彼の目が一瞬だけ揺れて、額にそっと口づけが落ちる。

「芽衣。俺は、この先ずっとお前がいればそれでいい。出産は身体に負担が大きいだろ。前、俺の起業に付き合って無理した。もう苦労させたくない。二人で、このまま一生――だめか?」

胸いっぱいの感動。

むしろ、負担をかけた自分が申し訳なくなるほどだった。

両親も、友人も、取引先も、社員まで口を揃えて言った。

相馬瑛太は芽衣を、自分の命より愛している――と。

芽衣も、疑わなかった。

結婚三年。

彼は芽衣の好みをすべて覚え、城南の老舗の今川焼きを「焼きたてがいちばん」と言った芽衣の一言のために、半分街を横断し、二時間並んで買ってくる。

暗がりが苦手な芽衣のために、彼は自ら設計し、部屋の隅々まで柔らかな灯りが届くようにした。

生理痛で芽衣が苦しめば、千万単位の会議を即座に止め、家に戻って黒糖生姜湯を煮て、手ずから飲ませる。

世界でいちばん幸せな姫にしておくのが自分の役目だと、甘やかすことを誇っていた。

――その「揺るぎない愛」は、記念日の翌日、粉々に砕けた。

瑛太の好物、ティラミスを手作りして、会社へサプライズに行った。

ところがオフィスの外で、芽衣は一生忘れられない光景を見た。

衣服の乱れた美月が、瑛太の上に跨っていた。

腕を首に絡め、深いキスを交わしている。

美月が、息を弾ませて言った。

「義兄さん。もしお姉ちゃんが知ったらさ――妹がとっくに義兄さんのベッドに上がってたって知ったら、どんな顔するかな?」

瑛太は冷たい顔で美月を乱暴に突き放し、少し乱れたシャツの襟を整えながら、断固たる声で言った。

「美月、最後に言う。芽衣の前で余計なことを言うな。もし一言でも漏れたら――どうなるか、分かってるだろ」

美月の顔が一瞬、歪んだ憎悪に染まる。

けれどすぐ、甘く無垢な仮面へ戻り、彼の腕にすり寄って甘えた。

「分かったぁ。お姉ちゃんと取り合ったりしない。あなたのそばにいられるなら、それで十分だもん」

ティラミスの箱を持つ芽衣の手が震えた。

下唇を歯で強く噛む。呼吸のたび、血の味がした。

――自分が、笑いものに思えた。

七年。

何もないところから共に這い上がり、会社を一無から時価総額億単位にまで育てた。

その会社の中で、彼は――芽衣がいちばん嫌っている養妹と関係を持っていた。

芽衣は飛び込んで問い詰めなかった。涙も一滴落とさなかった。

ただ、その丁寧に作ったティラミスをゴミ箱に投げ捨て、静かに会社を出た。

翌日も、いつも通り出勤した。

瑛太にも、普段と変わらない笑顔を向けた。

ただ、瑛太が触れようとするたび「疲れてるの」とやわらかく押し返した。

瑛太は、芽衣が仕事に没頭しているだけだと思い、困ったように、それでも甘やかすように髪を撫でるだけで深追いはしなかった。

その後、芽衣は裏で調べた。

手段も使った。瑛太と美月の関係が、少なくとも半年以上続いていたことを突き止めた。

ホテルの利用記録。

艶めいた言葉が並ぶチャットのスクリーンショット。

心は少しずつ死に、同時に少しずつ鉄のように固くなっていった。

一週間後。

ぼんやりしたまま横断歩道を渡り、黄信号を突っ込んできた車にかすられた。大怪我ではない。だが驚きと、脛の骨折で入院になった。

瑛太は青ざめて駆けつけ、三日三晩、片時も離れず付き添った。

三日間眠らず、頬はこけ、目は血走っている。医師も看護師も羨ましがった。

「相馬さん、ご主人、本当に手のひらで大事にされてますね」

――けれど三日目の午後、母から電話が来た。

美月が家の階段から落ちて足を捻った、と。

母は心底かわいそうだと言わんばかりに責めてくる。

「芽衣、妹が怪我したのに、どうして顔も出さないの。お姉ちゃんなのよ?」

芽衣は、ただ滑稽だと思った。

自分こそ実の娘なのに、入院していた数日、一度も見舞いに来なかったくせに。美月の捻挫程度で、こちらに「姉らしさ」を求める。

電話を切って十分もしないうちに、瑛太の携帯が鳴った。

スマホを握った彼は眉を寄せ、芽衣に申し訳なさそうな目を向ける。

「芽衣、会社で緊急のトラブルが出た。すぐ戻らないといけない。付き添いは手配する。すぐ戻るから……いいか?」

その目の奥をよぎった「やましさ」を、芽衣は見逃さなかった。

――美月の下手な芝居。そして瑛太は、美月のもとへ行く。

芽衣は、彼の背中を見送っても表情を変えなかった。

しばらくしてスマホを取り、海外へ繋がる番号を押す。

「先輩。私、茅野芽衣です」

「お願いがあるんです。先輩のご実家、外洋輸送もやってましたよね。三か月後、海難事故を……『演出』してほしい」

相手は理由を問わなかった。

ただ、静かに確認する。

「覚悟はある? 一度やったら、茅野芽衣という人間は、この世から完全に消える」

芽衣は、これまでにないほどはっきりと言った。

「決めました」

相馬瑛太の世界から消える。

この三か月で、自分のものを取り戻す。

そして、代償を払うべき人間を――身の破滅ごと叩き落とす。

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育ての親の一家に家を追い出されたあの日、私は微笑みを浮かべながら、奴らが施しとしてよこした金をゴミ箱へと投げ捨てた。

誰も想像すらできないだろう。この私が、数々の名門貴族や権力者たちが大金を積んで列をなし、首を長くして診察を待つ伝説の名医——【暁】だなんて。

私が時価総額数十億ドルのファッション帝国を裏で支配していることも、ウォール街の株価をたった一回の取引で大暴落させられることも、誰も知らない。私はその正体を、この平凡で冴えない素顔の裏にすべて隠し持っていた。

さらに劇的なことに、私の実の親はこの街で頂点に君臨する最高峰の大富豪だった。

そして私の婚約者——すでに顔を合わせているにもかかわらず、その正体を知らなかったあの男こそ、この街の誰もが名前を聞くだけで震え上がる、ビジネス界の冷酷な死神:梅原晴琉だったのだ。

ある日、彼は私の手を執り、ゆっくりと距離を詰めると、耳元で低く囁いた。

「俺のこの鼓動、今なら感じられるか?」

私は至って真面目な顔で彼の胸に手を当て、大真面目にこう返した。

「心拍数は確かに少し高めですが、非常に健康的です。心配ありませんよ」

彼は一瞬呆気にとられ、それからふっと吹き出した。その瞬間の彼の笑顔に、私の心臓もなぜかドクンと跳ねた。それは、自分自身でも説明のつかない初めての衝動だった。

だが、彼が私の真実に一歩ずつ近づくにつれ……私の心は揺らぎ始めている。自分の最後の秘密を、あとどれくらい隠し通せるのだろうか。

外されるはずのなかった仮面——。だが、あの人が執拗にその霧を剥ぎ取ろうとするとき、私は一体どこへ向かえばいいのだろう?
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