第29章 かつて彼を深く愛した

茅野芽衣は車窓の向こうの景色を眺めたまま、言葉を失っていた。

本当は、彼女にも海外留学のチャンスがあった。

けれど当時、相馬瑛太の事業は勢いに乗り始めたばかりで、彼女は何度も迷った末に恋を選んだ。相馬瑛太の仕事を、自分の責任みたいに背負い込んで。

まさか――相馬グループで「飾りみたいな役職」を与えられている相馬家の若奥様が、本来得意としていたのは薬学だなんて。

彼女と親友の山田未祐は、それぞれの専門で将来を嘱望されていた優等生だった。

男のために、大きな未来を手放した。

茅野芽衣は口元を引きつらせる。

「……そうだね。確かに、間違ってた」

人は、若い頃の青さと甘い夢に、いつか...

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