第35章 人さらい

また相馬悠真か!

相馬瑛太は、書類の署名欄を凝視した。そこに並ぶ「相馬悠真」の文字が、やけに目に刺さる。

怒りの矛先が定まらない。

茅野芽衣が拘束されていたことへの憤りか、それとも――自分の妻が別の男に連れて行かれた事実のほうが耐え難いのか。

「……いい。実にいい……相馬悠真」

「上等だ」

誰ひとりとして、相馬瑛太に近づこうとしなかった。

充血した目で、芽衣がさっきまでいた場所を睨みつけ、彼は低く、陰のある声で呟く。

「芽衣。出てきたなら、どうして家に帰らない」

そのとき、隣の部屋にいる茅野の両親が、その聞き覚えのある声に気づいた。

鉄格子を叩き、喜びと焦りが入り混じった...

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