第45章 憂さ晴らし

孤児院へ近づくほどに、茅野芽衣は口数を失っていった。

ようやく、久しく遠ざかっていた門の前に辿り着く。芽衣はその場で深呼吸を何度か繰り返し、震える指先で、重い鉄扉を押し開けた。

ギィィ……と、錆びついた軋みが響く。

人の気配ひとつない荒れ地には、その音だけがやけに生々しく、薄気味悪さを増幅させた。

相馬悠真は芽衣のすぐ隣に身を寄せ、周囲へ鋭い目を走らせる。低い声で告げた。

「気をつけて」

二人とも、自分たちがどれほど近い距離にいるのか、気づいていない。

ただ――その光景は、別の冷たい視線に、余すところなく切り取られていた。

物陰。奥に潜む、漆黒のレンズ。

間宮千鶴はシャッタ...

ログインして続きを読む