第55章 彼は心を動かされた

相馬悠真のことが頭をよぎるたび、相馬瑛太の陰った顔色は、幾度も形を変えた。

茅野芽衣はすでに状況を飲み込み、唇をきゅっと結ぶ。不安げに周囲を見回し、声を潜めて震えるように言った。

「……ここにあるもの、怖い」

その「頼ってくる目」に甘やかされるような心地がして、相馬瑛太はさっきまでの疑念を一瞬で忘れた。芽衣の鼻先を軽くつまみ、苦笑混じりに言う。

「疑いすぎだって。こんな場所で食べ物に薬なんて、そこまでしないさ」

そう言いながら自分から小さなケーキをひと口、口に運ぶ。芽衣に「飲み込んだ」のを見せてから、やわらかな声で宥めた。

「少しは食べろ。食べないと、俺が落ち着かない」

芽衣は...

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