第82章 新しい生活

相馬悠真は少し離れた場所まで歩き、電話に出た。声は冷えたまま。

「……何の用だ」

受話口の向こうから、すぐに不満げな声が返ってくる。

「悠真、お前さ。用件を聞く前に、まず『父さん』の一言くらい言えないのか?」

相馬悠真は取り合わない。

「用件だけ言え」

神崎英明は、誰にも聞こえないように小さく息を吐いた。

息子が家業を継ぐ気でいることと、過去の自分を許すことは、別だ。痛いほど分かっている。

――焦るな。少しずつだ。

そう言い聞かせながら、英明は本題に入った。

「お前にひとつ、任せたい仕事がある」

セイゲン・ホールディングスは老舗で基盤も大きい。だが、これまでは海外に重心...

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