第90章 人違いだった

相馬悠真の動きは速かった。三十分も経たないうちにマンションの下へ着き、茅野芽衣をある療養所へと入れた。

療養所は山と水に寄り添うように、半山腰に建っている。空気は澄み、周囲は静かで――身を隠すには申し分ない場所だった。

ひと通り手配を終えると、相馬悠真は根気よく彼女を落ち着かせた。

「芽衣。あまり心配するな。相馬瑛太の件は俺が何とかする。お前を見つけさせない」

茅野芽衣は小さくうなずく。今の彼女にできるのは、相馬悠真を信じることだけだった。

やがて相馬悠真は踵を返して去り、茅野芽衣はひとり療養所の中を歩いてみた。

清潔で、広く、整いすぎるほど整った空間。どこか、昔いた孤児院の雰囲...

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