第114章 「子供」を藤井家に送り返す

小野秘書は、自分の若様の気質をよく知っている。表向きは両親や兄、叔父伯父といった年長者をきちんと敬い、妹には甘い。

節度があり礼を失わず、感情の起伏も少ない。いつも穏やかで、隙がない。

けれど――完璧すぎる氷室蒼生は、逆に小野秘書をぞっとさせた。

欲というものが、まるでない。

その実、骨の髄まで冷たい。薄情なんて言葉では足りないほどに。

ただ一人、立花結月だけが彼を蓮台から引きずり下ろし、人の世へ連れ戻せる。まるで「人間」になったみたいに、彼に温度を与えられる。

これまでは傍観者だった。結月が必要とするときだけ、手を差し伸べる――それだけ。

だが今は違う。

彼の冷酷な面が、は...

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