第21章 踏み込んだ駆け引き

立花結月が法律事務所に着いた。化粧はしていない。鼻梁には大きなサングラス。顔の大半を隠している。

ドアをくぐるなり、パソコンの前でカタカタとキーボードを叩く男が目に入った。

以前よりもずっと精悍で、仕事ができる空気を纏っている。結月はバッグを置き、室内を一瞥して口角を上げた。

「木村弁護士。忙しそうね」

木村弦次は最後の一文字を打ち終えると、細い指で眼鏡を押し上げ、ようやく顔を上げた。

「立花先生。お久しぶりです」

結月はサングラスを外し、机の上に置かれた『民法典』を何気なくめくる。まるで昔からここに通っていたみたいに、手つきが馴染んでいた。

「挨拶はいい。ひとつ頼みたいの」

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