第35章 彼の妻が他人の腕を組み、トレンドが爆発した

藤井グループ社長室。

重厚な無垢材のエグゼクティブデスク。その上の灰皿は吸い殻で山になっていた。

藤井修也は本来、几帳面で節制の効いた男だ。欲望に振り回される感覚が嫌いで、煙草でさえ「1日3本まで」と自分にルールを課している。

――なのに最近、立花結月が絡むと、どうにも歯止めが利かない。

ウィリスとの契約は目前。こんな大事な局面で、胸の奥に嫌な予感がこびりついて離れなかった。

目を閉じるたびに浮かぶのは、氷室蒼生の、あの傲岸不遜な顔。

あいつは隠しもしなかった。一語一語、わざと聞かせるように言ったのだ。立花結月は必ず手に入れる、と。

藤井修也の指の中で、煙草がぐしゃりと潰れる。...

ログインして続きを読む